心療内科・精神科

摂食障害(中枢性摂食異常症)

拒食症・過食症 1~2割は慢性化

 一般に拒食症と過食症とに区別されていますが、両者は共に、強いやせ願望(肥満恐怖)を抱いていること、そのため食べた後に自己誘発性嘔吐や緩下剤を使うなどして排出しようとすること、日中は拒食していて夜間に過食する患者も多いことなどから両者は必ずしもはっきりと区別されるわけではありません。また、これらはやせていることが美しいという価値観である社会においてのみ発症が見られるもの(太っていることが賛美される社会では摂食障害の患者はいません)で、そうした社会的因子も大きく関与していると考えられています。
 思春期の女性の発症が大多数です。女性の生涯有病率は拒食症で0.9%、BNで1.5%との報告がありますが、近年は過食症が拒食症より圧倒的に多い印象です。

【 症状 】
拒食症:神経性やせ症/神経性無食欲症(AN:Anorexie nervosa)
①身体症状
・食事制限のため著しい低体重。期待される体重の85%(DSN-IV)、BMI17以下(DSM-5)
・低血圧・徐脈
・月経不順・無月経(BMI 17.5前後から無月経になることが多い)
・低カリウム血症(←嘔吐による胃液の減少、下痢による腸液の減少の喪失)→不整脈
・唾液腺の腫張、炎症(→高アミラーゼ血症)
・骨塩低下→骨粗鬆症
・過活動、運動強迫(原因ははっきりしないが、動物は飢餓状態では多動になるとも言われている)
・食べると嘔吐(→指だこ、歯の溶解)、緩下剤・利尿剤などで排出しようとする
②心理面
・肥満恐怖、やせ願望
・ボディイメージの障害(明らかに過剰にやせているがまだお腹の辺りに肉が付いていて膨らんでいると思い込むなど)
・体重や体形が自己評価(自信、自己嫌悪)に過剰な影響を及ぼす
・極端な低体重でもその深刻さを理解していない

過食症:神経性過食症(神経性大食症(BN:Bulimia nervosa)
①身体症状
・過食を止められない(過食中の自分はまるで動物のようになったと感じつつ強い自己嫌悪・自己卑下をする事が多い)
・代償行動(自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤使用、絶食、過剰な運動)
・生活リズムの障害:日中の絶食、夜中に過食嘔吐し睡眠不足     
②心理面
・肥満恐怖、やせ願望
・体重や体型で自己評価が左右される
・過食中の失コントロール感、無力感、苦痛、自己嫌悪
・失感情症(アレキシサイミア)>空腹感や満腹感がよくわからない
・完全主義、白黒思考

【 経過・予後 】
 拒食症も過食症も1~2割は慢性化するとの報告もあります。重症の拒食症では餓死、自殺に到ることがあります。

【 治療 】
 身体面と心理面の両方に対して行う必要があります。例えば、拒食症に対し、体重のみに注目し、強制的に栄養を与える入院治療(よく行なわれるのは、体重がどれだけになったら面会・外出・外泊・退院を許可するとして摂食を促すもの)を行う場合、体重が回復しても、本人は治療の意味を理解せず、その後の治療を拒否する(退院したらまた食べなくなってしまう)ことがあります。一方、対人関係など心理的問題に注目して改善を図っても、これだけで体重が増えるとは限りません。極度な低栄養で危機的状況にある場合は、身体的治療が最優先されますが、回復とともに心理面でも援助を行うなど、その時の状況に応じたバランスの良い治療が求められます。
 なお私の治療経験からは、摂食障害(特に過食症)の人は背伸びをしている(無理に頑張っている)人が多い印象です。また、本人の治療意欲がないのに治療しても効果はなく、本人が治したいと自覚してからの治療が有効なようです。

【 病態 】
・かつて拒食症について、女性性や成熟の拒否等の心理面が論じられた時期がありました。
・双生児研究の結果などから、拒食症については遺伝の関与が、過食症には環境因の関与が大きいことが示唆されています。
・近年は、レプチン・オレキシンなどの神経ペプチドの研究も進んでいます。今後は食欲中枢の脆弱性などについて明らかとなり、これらに働きかける薬物療法が開発されるかもしれません。

心療内科・精神科

  1. パニック障害(不安障害)

    パニック障害(不安障害)

    その不安や恐怖は、「考えすぎ」や「心配性」など気持ちのもち方や性格の問題ではないかもしれません。

  2. 睡眠障害(不眠症)

    睡眠障害(不眠症)

    「最近よく眠れない」「寝てるのにスッキリしない」と感じていても、自分の睡眠状態がわからない方はよくいらっしゃいます。代表的な不眠の症状にどういうものがあるのかを知り早期発見を。

  3. うつ病

    うつ病

    うつ病の方の97%は、2つの質問のうち、どちらか一方があてはまるとの研究報告があります。    その質問とは…

  4. 認知症

    認知症

    物事を記憶する、考える、判断するなどの脳の認知機能が低下し、日常生活に支障をきたしてしまうことを指します。

  5. 統合失調症

    統合失調症

    常に誰かに見られている気がする… 誰かにいつも悪口を言われている気がする… そう感じたことはありませんか?

  6. 自閉スペクトラム症(ASD)

    自閉スペクトラム症(ASD)

    「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いこと」を特徴とする発達障害の一種です。

  7. 躁うつ病(双極性感情障害)

    躁うつ病(双極性感情障害)

    うつ病だと思いながらも、極端に調子がよくなって活発になる時がある方は、躁うつ病かもしれません。

  8. 注意欠如多動症

    注意欠如多動症

    集中できない、忘れ物が多い、ケアレスミスが多い、我慢できない、周りに落ち着きがないと言われる…そんなお悩みありませんか?

  9. 社交不安障害(SAD)

    社交不安障害(SAD)

    “ 緊張 ”と聞くと誰にでもありうる事ですが、毎回強い不安、動悸、下痢、発汗、時にパニック発作といった不安症状が起こります。

  10. 身体表現性障害

    身体表現性障害

    身体の検査結果は異状がないのにも関わらず、身体の病気と思われるほどの症状があらわれ症状に伴う苦痛、不安によって、生活に支障が生じます。

  11. 心身症

    心身症

    身体疾患の治療は身体の治療だけで大丈夫でない場合があります。心身症は様々な疾患の発症・進行・回復・再発に関係しています。

  12. 摂食障害(中枢性摂食異常症)

    摂食障害(中枢性摂食異常症)

    「やせたい」という強い思いがあったりと、本人はなかなか治療したがりません。しかし、低栄養から様々な体の不調につながり、死に至ることもあり拒食・過食とも治療が重要です。

  13. 性同一性障害(性別違和感)

    性同一性障害(性別違和感)

    性の違和感を感じていませんか?身体の性と心の性との不一致により困惑や苦痛を感じます。

  14. パーソナリティ障害

    パーソナリティ障害

    パーソナリティ(人格)の極端な偏りがあり、それにより自己または周囲が苦しんだり迷惑を被ったりします。

  15. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

    心的外傷後ストレス障害(PTSD)

    トラウマだからPTSDじゃないかもしれない…そう思っていませんか?PTSDでなくても今つらい思いをしているのなら一人で我慢せずご相談を。

  16. 不登校

    不登校

    不登校における原因の半数はメンタルヘルスの問題(文化省調査)とされており、いじめが原因でない場合もあります。

  17. 適応障害

    適応障害

    強いストレスが持続してかかった際に心身のバランスが崩れて気分が落ち込み、不安の症状が強く生きるのが辛くなり日常生活に支障が出てしまいます。

  18. 気分変調性障害

    気分変調性障害

    ここ最近毎日気分が落ち込んだり、ネガディブになったりしていませんか?気付くことが治療の第一歩です。

  19. 月経前症候群(PMS)月経前気分障害(PMDD)

    月経前症候群(PMS)月経前気分障害(PMDD)

    生理前は誰だって辛い…そう思って我慢していませんか?症状の重さは人それぞれです。

  20. 強迫性障害

    強迫性障害

    「しないではいられない」「考えずにいらない」そう頭によぎって自分では不可避となります。

PAGE TOP